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ヤマトカブト飼育記2023-3



前回の記事


この記事は上記リンクの続きのお話。東京都産のヤマトカブトを32頭ほど実際に掘り出し、その成長具合を確かめる回でした。今回はすべての幼虫をボトルに移したことで採れたデータをできる限り解析してみたいと思います。


現在幼虫、ということはまだ結果が決まっておらず可変の状態にあることは重々承知のうえで、3令幼虫の頭幅という不変の要素を交えて考えてみたいと思います。

我が家では全3都県10系統の幼虫を飼育しております。大半は東京都のもので、現在生存している189頭のうち157頭は東京都産のものです。残りは12頭が群馬県、20頭が神奈川県横浜市のものですね。横浜市は今年からボクとその周囲で開拓し始めたポイントで採集を行っています。東京都も今年は購入で済ませましたが同ポイントへはボク自身も何度か通っております。いずれもまた来年向かうつもりです。群馬県のもののみボクは関わっていません。単なる購入です。群馬に(行ったことがないから)特別思い入れはなく、時季外れの個体が欲しかったのですが、なぜか他産地と足並みがそろってしまいました。

情報公開は常にリスクを伴いますから、違う産地があるときはポイントごとに番号を割り振り、必要以外に公開しないことで不特定多数がむやみに採集に行くことのないようあらかじめ配慮していることをご了承ください。


前置きが長くなりましたが、以下に2本目投入までの全データを公開いたします。

仕事や他種の管理などで投入までに時間がかかっている個体もいますが、それも含めて検証データになると考えています。群馬、東京、神奈川の順です。それではどうぞ。

群馬&東京1A-1

東京1A-2

東京1B

東京1C&1D

東京1E01~1E32

東京1E33~43&東京2&横浜1(神奈川)

以上、総勢195頭分。この時点で死亡確認6頭のため全189頭分のデータとします。群馬死にすぎだからぁ!!


ところどころ不自然なくらい頭数が少ない系統がいますが、これは割り出し後の救出の遅れによる餓死と考えられます。それくらいヤマトカブトにおいては生まれた瞬間からが勝負となっています。現に、早急に1本目のボトルにありつけたグループはそうでないグループに比べはるかに伸びしろがあり、頭幅も雌雄問わず1㎜程度大きくなっています。

ようやく10月になってからボトルに移したグループは系統を問わず10ℊ程度かそれ以下のものが多く、とても健康とは言えない状態です。一般家庭こそここまでの放置はないと思われるので、この状態からとうなる?というのは少し気になることろです。


この3年間ヤマトカブトには特に意識を向けてきました。その中で感じたことは、彼らに廃マット処理は合わないということです。最初の2年間ほどは質の悪いマットを与えていたと思っているのですが、合わないマットだととことん体重が乗らないのです。たしか4回は交換しました。それで60㎜くらいの「どうして育てたんだろう」という程度の個体が出てきます。メスなんか35㎜くらいの貧弱なのが出てきました。オスもいいとこ70㎜くらいで、それなら採りに行った方がよほどいいんですよ。日本のカブトムシもろくに育てられないとは、と何度自分を責めたかわかりません。中学生の時に羽化した53㎜くらいの♀(それを超えた今考えてもやはりでかい)が脳裏をちらつくので余計に……!それで経過観察してみようとなって、去年からあんな風にデータを取ることにしました。

実際には2本返しでもなんとか80㎜は出せるんです。ただ、個別飼育が前提なんです。データをとれるのだって個別飼育だから。最初こそ本や周囲の言うことを真に受けて、何も考えず多頭飼育にしていました。これがそもそもの敗因でした。多頭飼育でヤマトカブトは限界まで大きくなれないんです。それどころか不全や死亡率も上がりました。ほかの家庭ではどうかわかりませんし、単にボクが多頭飼育を苦手としていたのかもしれません。それでも彼らは人間的に言うと兄妹同士・同種同士「気を遣い合う」、昆虫的に言うと「牽制し合う」生態なので、それ自体がストレスになっていたりするんじゃないかなと思ったりします。何者かが接触できるということは敵であるかいちいち疑わないといけませんからね。一応ただの予測です。書いておきます、予測です!

あとは、ヤマトカブトではあまり恩恵がないんですが、羽化ずれ対策する一環で♂と♀の幼虫を同じケース内で管理すると成長の遅い方が早い方に合わせて成長を止めて蛹になるという性質があるようで、こういうのも大きさを目指すうえでは厄介です。例えば集団の中に群を抜いて早熟な個体がいたら、他にまだまだ伸びしろがある個体がいたとしてもみんなそいつに合わせて蛹になろうとするんです。同日に、とまではいきませんがかなり足並みそろうようです。これも大きさを狙う上では避けたいです。成熟が早いことも本来個性なのに足手まといとか思いたくないんですよ。早めに羽化することをむしろ喜びたい。初夏に幼虫誕生をぶつけるのが絶好のチャンス。だから個別飼育なんです。個別飼育しか勝たん!


本題に戻しますが、系統ごとに成長差が表れているように思います。群馬県のものは採集の段階でこだわれていないため今回は分析対象に含めません。そもそも早めに対応したはずが全然反映されていないと感じます。なんか死亡率も高い!

神奈川のものも1本目に入れたのが今月なので考えないことにします。こちらに関しては対処が遅かったと反省しております。今年は与えるマットに慣れてもらい、来年から本格始動でいいかなと。もちろん今年も2ヶ月に一度は取り換えるようにして追いつけるかやってみますよ。

ということで今回の分析対象は東京都地点1です。

C~Eの3系統は新たに導入した野外直系です。AとBはボクが採集に出かけた際の思い出のラインです。

まずはAについて分析します。

A-1は採集した時のままインラインを続けました。A-2は今年初めてWF2だったAライン最大の54.7㎜♀に今年採集の81.8㎜(頭角幅19.7㎜)の♂を掛け合わせた面白いラインです。WF3となると数が取れなくなってきましたね。ここら辺が限界でしょうか。一応WF3同士を掛け合わせてWF4まで様子を見るつもりではありますが、採れないわ太らないわで今年は全然期待していません。一応彼らの名誉のために言うと、去年の今頃より全体的に一回り太っており、♀でさえ20ℊを下回っていないので結果は改善しています。それでももっと格上が出てしまっているのでこの系統は色を楽しむものと割り切ろうかと思います。

次にBラインですかね。

BラインはAラインがWF1の時点でアウトラインにした系統でして、これも去年はひどかったものですよ。去年の時点ではAラインのインラインの方がよほどいい結果が出ていました。80㎜に達する♂がいないのもダメでした。ところで今年ですが、その後のインラインということでCBF2になりました。まだ結果が確定しないということで続投しましたが今回は良かったです。体重部門暫定一位の個体がこのBラインの38.7ℊです。♀も27.1ℊで暫定1位です。データ上25ℊを超える♀はかなり大型で、それくらいになると50㎜は目指せます。過去にAラインから34.9ℊの♀も出てきましたが、今回のBラインはそれを1頭だけでなく複数頭目指せる状態にあると思います。成長期が終わるまでは割と頻繁にマット交換してやった方がいいかもしれません。

ここまでで去年のデータとも照らし合わせると、アウトライン直後って結果が出ないんですよ。ここであきらめてたらアウトラインの良さを解らずにいたので、続けてよかったです。だっておかしいじゃないですか。A-2ラインに導入したWDの♂って正直ボクが羽化させたAラインの81.8㎜(件のWDと体長だけは一緒)より美形なんですよ。しかも血を入れ換えてるんだから血の鮮度が上がるはず。つまり伸びしろが回復しないとなんかおかしい。それが反映されるのは入れ換えた直後のCBF1じゃないのかもなぁという一つの可能性です。A-2もまた来年はインラインにしたら、そしてアウトラインにするA-3ライン(仮)も用意したら、結論が出ると思います。そこまでやるかなぁ?

以降は新ラインですので、最初からデータを取って丁寧にやっている系統、というのはこれが初といってもいいでしょう。

Cラインです。これまでご紹介したA~Cまですべてが赤系統です。角を含めて赤を目指して交配を重ねています。赤系では唯一WF1の系統です。さすがWF1といったところで、適当な産ませ方でも割と頭数残ってくれました。暫定最大は33.0ℊですね。これは去年のAとBを見てもかなり良い結果なんです。おかしいですね、親は全然大きくないのに。71.5㎜と47.6㎜です。するとやはり大事なのはそこじゃないんだなって。今回、データを見てもわかるようにボクはこのC~Eの幼虫を特に優先してボトルに移しました。そこが反映されたなと感じています。なんで、この時Bラインを優先していたらまた違うことが起こっただろうなと、そう思うんです。その証拠に頭幅12㎜を超える個体が出てきています。A,Bともに成しえず、逆にC~Eすべてで12㎜を超える頭幅の持ち主が出てきています。頭を育てるってのは生まれた瞬間からもう勝負が始まっていて、この頭の大きさが伸びしろを作っているんだと考えています。もう少し目先の話をすると、この頭の大きさって若齢の時どのくらいいい環境にいたかという指針になるんですよ。多少の逆転はありますが、頭が大きい方が羽化後の最大体長が大きくなる傾向にあったのは間違いありません。

D,EはDが少ないためまとめて分析します。この系統は黒狙いで初導入したもので、本州の角の長いカブトで黒いのが欲しいなぁと始めたものです。これらの系統は全体を見ても頭が大きく、体重の乗りも信じられないくらい良く、これからに期待できる系統です。黒の方が赤より丈夫かな、という感じがします。頭幅はEラインの12.3㎜が最大で、マイレコード更新です。♀でも♂顔負けの11.5㎜というのが出てきています。ヤマトカブトはそんなに頭幅に性差が出ない方ではあるのですが、最大値を取るのはやはり♂です。そういう意味で、♂に負けない♀が出てくるのはかなり面白いです。体重も2本目時点でEから1頭だけ20ℊ未満が出ただけで、他はみな20ℊを超えています。Dの1本目でくすぶっている2頭の伸び方次第ですが、やはり早めに適切な容器に入れ、すぐ成長を促した方がいいようです。

余談ですが、Eラインからは総計100の卵が得られました。このラインだけは唯一販売もしていたので、持っている方はラッキーですね。だって、最初から大きくなるようにって大きな容器で売ったんですから。あれはかなりこだわりました。いずれ全国に向けてそういう販売の仕方もできればいいんですけどね。

たくさん産む♀からの子だから強かったんですかね?そこらへんはわかりませんが、とにかくこのEラインが一番生命を感じました。


ここまで長かったと思いますが、最後までご覧いただきありがとうございます。ここまで読んでくれたあなたはもうボクのファンですね。次回のヤマトカブトはまだ2本目に入れていない個体のお世話もしくは3本目のお話ができたらいいなと思います。

またお会いしましょう!



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